配当所得の所得税と住民税で異なる課税方式を選択する

将来の備えとして株や投資信託で投資をしているフリーランスさん多いですよね。証券会社 銀行の口座を 特定口座 源泉徴収あり にしていれば売却益や配当から所得税と住民税が自動的に差し引かれるので そのままにしている人もいると思います。私もサラリーマン時代はそのままにしていました。

実は 株や投資信託の売却益や配当を確定申告すると税率が下がる場合があるんです。フリーランスとサラーリマンでは有利になる口座が違います。フリーランスが選択すべき口座と課税方式を解説します。

このページの目的
  •  配当所得を 総合課税 にして所得税率を下げる!
  •  住民税の課税方式のみ 申告不要 を選択して住民税率を 5%のままにする!

口座の種類

証券会社 銀行の投資用口座には 4 つの種類があります。

種類          特徴
特定口座 源泉徴収あり証券会社 銀行が年間取引報告書を作成してくれる。税金が源泉徴収される。確定申告は任意。確定申告で課税方式を変えることもできる。
特定口座 源泉徴収なし証券会社 銀行が年間取引報告書を作成してくれる。源泉徴収されない。確定申告が必要になることがある。
一般口座証券会社 銀行が年間取引報告書を作成してくれない。源泉徴収されない。確定申告が必要になることがある。
NISA 口座一定期間非課税。年間の投資額に上限あり。

特定口座 源泉徴収あり は確定申告が不要 特定口座 源泉徴収なし は確定申告が必要と説明されていることがありますが この説明は正確ではありません。実際は 特定口座 源泉徴収あり でも確定申告できますし 特定口座 源泉徴収なし でも確定申告が不要なケースがあります。

サラリーマンは特定口座 源泉徴収なし が有利

特定口座 源泉徴収あり を選択しているサラリーマンも多いと思いますが 実はサラリーマンの場合は特定口座 源泉徴収なし のほうが有利です。

給与所得 退職所得以外の所得が 20 万円以下の人は確定申告をしなくてもよいことになっています。つまり 株や投資信託の利益が年間 20 万円以下なら確定申告しなくていいのです。

20 万円を超えてしまった場合には確定申告が必要になりますが その場合も申告分離課税を選択すれば 源泉徴収あり と同じ税率 所得税率 15% + 住民税率 5% になります。超過累進で高い税率になってしまうことはないので 特定口座 源泉徴収なし を選択して不利になることはありません。

国民健康保険に加入している人 社保未加入の人 は注意
申告分離課税を選択すると譲渡所得 配当所得の分だけ総所得が上がります。その結果 国民健康保険料が上がってしまうので注意してください。協会けんぽ 組合健保の場合は給与所得で健康保険料が決まるので譲渡所得 配当所得を申告しても健康保険料が上がることはありません。

フリーランスは特定口座 源泉徴収あり が有利

フリーランスは事業所得があるので原則として確定申告が必要です。確定申告をする場合は 20 万円以下の譲渡所得 配当所得 雑所得であっても申告書に記入しなければなりません。つまり フリーランスの場合は 20 万円以下なら確定申告不要 という給与所得者の恩恵を得ることができないのです。

そのため フリーランスの場合は 特定口座 源泉徴収あり が有利になります。源泉徴収あり なら 申告方法の選択肢をすべて残すことができるからです。

納税申告方法    所得税率住民税率コメント
総合課税0~45%10%国民健康保険料が上がる。総所得が低い場合に有利。
申告分離課税15%5%国民健康保険料が上がる。
申告不要 源泉徴収15%5%国民健康保険料が上がらない。

※ 配当所得の場合は 総合課税 申告分離課税 申告不要 のいずれかを選択できます。
  譲渡所得の場合は 申告分離課税 申告不要 のいずれかを選択できます。

口座を 特定口座 源泉徴収なし にしてしまうと 申告不要 を選択することができなくなります。

フリーランスの場合は事業所得がどのくらいになるのか先行き不透明ということもありますよね。源泉徴収あり にしておけば 事業が上手くいかず事業所得を含めた総所得が低くなってしまったら 総合課税 を選択する 事業が順風満帆で総所得が高くなったら 申告不要 を選択する といった切り替えができます。

源泉徴収済の税額は確定申告の納税額からきちんと引かれますし 納税額よりも源泉徴収税額のほうが多ければ還付金として返ってきます。フリーランスの場合は 源泉徴収あり にしておいて損することはないと言えます。

配当所得は総合課税を選択すると有利

申告分離課税 申告不要 源泉徴収 を選択した場合の所得税率は 15%ですが 総合課税を選択すると総所得に応じた累進税率 5~45% が適用されます。総合課税が選択できる配当所得の場合は総合課税を選択したほうが有利になるケースが多いです。

課税される所得金額所得税率 
~ 195 万円5% 
195 ~ 330 万円10% 
330 ~ 695 万円20% 
695 ~ 900 万円23% 
900 ~ 1,800 万円33% 
1,800 ~ 4,000 万円40% 
4,000 万円 ~45% 

たとえば 事業所得も含めた課税総所得が 300 万円の場合は所得税の累進税率は 10%になるため 申告分離課税 申告不要を選択した場合の所得税率 15%よりも有利になります。

さらに 投資対象が上場国内株式 上場国内投信の場合は配当控除として 10 ポイントの税率低下ボーナスが付きます。所得 300 万円の税率は 10%と言いましたが配当控除を加味すると 10% - 10% = 0%になります。10%の配当控除が適用される場合を考えると 課税所得 900 万円以下の所得税率 23%まで総合課税が有利ということになります。配当控除を引いた後の税率は 13% となり 申告分離課税 申告不要選択時の 15%よりも税率が低くなるからです。900 万円を超える場合は所得税率が 33% 配当控除 -10%を加味しても 23%になるため 申告分離課税 申告不要のほうが有利ということになります。

配当控除として 10 ポイントのボーナスが付くのは上場国内株式 投信の場合であることに注意してください。国内上場されていても海外資産に投資する外貨建て資産には配当控除は適用されません。たとえば S&P500 やダウ工業株 30 種平均には配当控除が適用されません。

  •  上場国内株式 投信の場合は 総所得 900 万円以下なら総合課税が有利
  •  外貨建て資産の場合でも 総所得 330 万円以下なら総合課税が有利

所得税と住民税で異なる課税方式を選択できる

総合課税を選択することで配当所得の所得税率が下がることが分かりました。ところで 住民税率はどうなるんでしょうか?

納税申告方法    所得税率住民税率
総合課税0~45%10%
申告分離課税15%5%
申告不要 源泉徴収15%5%

この税率表によると 総合課税を選択すると住民税率が 10%に上がってしまうため 所得税率の減少分を打ち消して逆に損してしまうこともありそうです。

心配無用です。実は 所得税と住民税で異なる申告方法を選択することができるんです。所得税では総合課税を選択して 住民税では申告不要 源泉徴収 を選択する という良いとこ取りができます。

納税申告方法    所得税率住民税率
総合課税0~45%10%
申告分離課税15%5%
申告不要 源泉徴収15%5%

住民税の課税方式として 申告不要 源泉徴収 を選択すると 国民健康保険料も上がりません。所得税の確定申告では総所得が増えていますが 住民税の計算時には総所得から申告不要を選択した配当所得 譲渡所得を引いてくれます。そして 国民健康保険料も配当所得 譲渡所得を除いた所得で決まります。

住民税の課税方式を変えるには

配当所得の所得税課税方式を総合課税や申告分離課税に変更するのは確定申告でできます。確定申告だけだと住民税にも所得税と同じ課税方式が適用されてしまいます。所得税とは異なる課税方式を住民税で選択するには市区町村に申し出る必要があります。

市区町村によって手続きが異なると思いますが だいたいは住民税の申告書と一緒に課税方式の申出書を提出するようです。

新宿区の場合

私は新宿区在住ですので新宿区で実際に住民税の課税方式変更をしてみました。

課税方式の申出書だけを提出することはできず 一緒に住民税 特別区民税 都民税 申告書も提出する必要がありました。といっても 住民税申告書の記入は難しくありませんでした。確定申告書 所得税及び復興特別所得税の申告内容確認表 B のコピーを添付するので 住民税申告書には収入金額 所得金額 控除金額などを記入する必要はありません。記入するのは 住所 氏名 連絡先 マイナンバーという基本情報だけで OK でした。

特別区民税 都民税 申告書 新宿区の場合

肝心の 特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額の課税方式申出書 の記入も簡単です。右上に住所 氏名 連絡先を記入して課税方式の選択方式のいずれかにチェックを入れます。

特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額の課税方式申出書 新宿区の場合

すべて申告不要を選択します にチェックを入れれば 源泉徴収されたままとなり住民税率 5%となります。住民税を計算するときに課税所得から配当所得の分を引いてくれるので 課税所得に対して住民税が算出されてしまうこともありません。

上記の 特別区民税 都民税 申告書 課税方式申出書 は新宿区のウェブサイトからダウンロードして印刷することもできますし 歌舞伎町にある新宿区役所 6F 総務部税務課でもらうこともできます。新宿区にはいくつかの特別出張所があり一部の区役所業務をおこなっているのですが 残念ながら上記の申告書と課税方式申出書は特別出張所には置いてありませんでした。

記入する項目も少ないので 新宿区役所に足を運んで申告書と課税方式申出書を受け取り その場で記入して提出してしまうのが簡単だと思います。職員さんが記入内容に不備がないかその場でざっと確認してくれるので郵送よりも安心できます。特別区民税 都民税 申告書 課税方式申出書 は記入後にコピーを取るか 同じ用紙を 2 枚記入して 控え を作成し 窓口提出時に 控え も提出して この控えにも収受印を押してください と頼みましょう。紛失等 万が一の場合に 自分が課税方式申出書を提出していたことを証明できます。

課税方式の申出に必要なもの

  •  特別区民税 都民税 申告書 区役所でもらえます
  •  課税方式申出書 区役所でもらえます
  •  確定申告書のコピー
  •  特定口座の年間取引報告書 証券会社 銀行から送られてきます
  •  印鑑 認印で OK
  •  マイナンバーカード

申告書に 個人番号 を記入する必要があるのでマイナンバーカードを忘れずに持っていきましょう。マイナンバーカードは本人確認書類としても使えるので マイナンバーカードを持っていけば運転免許証など他の本人確認書類は不要です。

確定申告シーズンに区役所の税務課に行くとスタッフが増員されていました。要件を聞かれて 住民税の申告を… と伝えると サッと住民税申告セットを渡されたりします。この基本セットには住民税の申告書と記入方法 郵送用の封筒などが入っているのですが 肝心の 課税方式申出書 は入っていませんでした。

番号札を取って順番を待ち 窓口で課税方式申出書が欲しい旨を伝えると 課税方式申出書 特別区民税 都民税 申告書 を出してくれます。この 特別区民税 都民税 申告書 は課税申告申出専用となっており記入不要なところに 別紙のとおり という黒スタンプがあらかじめ押されていて分かりやすいです。