青色申告(複式簿記)で65万円の控除を受けるために必要な帳簿と決算書をかんたんに作成できるフリーソフトウェア aoiro を紹介します。

確定申告には、白色申告、青色申告(簡易簿記、現金式簡易簿記、複式簿記)の 4種類があります。4種類の中でも青色申告(複式簿記)の控除金額は65万円と抜きん出ています。

確定申告の種類 控除金額
白色申告 なし
青色申告 (簡易簿記) 10万円
青色申告 (現金式簡易簿記) 10万円
青色申告 (複式簿記) 65万円

こんなにも控除金額に差があると、65万円控除を受けるための青色申告(複式簿記)はすごく難しいに違いないと敬遠したい気持ちになってしまうかもしれませんが、そんなことはまったくありません。複式簿記とても簡単なんです。帳簿を手書きしていた時代ならともかく、今はコンピューターがあります。日々の取引を入力していくだけで必要な帳簿や決算書はすべて自動で作成できる時代になっています。

日々の取引を記録していくことを仕訳といいます。たとえば、100円の文房具を購入したら「消耗品費が100円増えて、現金が100円減った」という仕訳を入力します。この仕訳だけは人が入力しなければなりません。コンピューターの外で何が起こっているかコンピューターには分かりませんからね。

この仕訳さえ入力してしまえば、あとはコンピューターが帳簿(仕訳帳、総勘定元帳)と決算書(損益計算書、貸借対照表)を自動的に出力してくれます。これらの自動的に出力される帳簿と決算書で青色申告(複式簿記)65万円控除を受けることができます。

aoiroって何?

aoiroは青色申告(複式簿記)に必要な帳簿と決算書を自動的に作成してPDF形式で出力してくれるフリーソフトウェアです。

私自身、個人事業主として仕事をしています。青色申告(複式簿記)をするために大手の青色申告ソフトやクラウドサービスを試してみたこともあります。中には“無料で使える”と謳っているクラウドサービスもありますが、入力可能な月間仕訳数が制限されていて次第に有料プランへのアップグレードへ誘導されていきます。

パッケージソフトは毎年新しいバージョンが発売されサポートの更新や買い替えを促されます。複式簿記や決算書といった会計の基本は何も変わっていないはずなのに、毎年、新しいバージョンが発売されて何が変わっているのでしょう?

実は基本的な会計機能は何も変わっていません。オンラインバンキングや交通系ICカードからデータ連携できるとか、カメラでレシートを読み取ってデータ連動できるとか、各社、付加価値の向上に力を入れているようです。多機能になっていくのは悪いことではありませんが、多機能になればなるほど、すべての機能を使いこなすのは難しくなっていきます。

会計は好きじゃない。青色申告特別控除65万円が受けたいだけ。余計な機能は要らない。
65万円控除を受けるのに必要な最低限の帳簿と決算書を作るソフトウェアが欲しい。

こう思っている人も少なくないでしょう。私もそうです。そして、青色申告(複式簿記)に必要な最小限の機能だけを備えた会計ソフトを自分で作ることにしました。私はプログラム開発を専門とするITフリーランスだったのです :-)

こうして生まれたのが青色申告ソフトウェア aoiro です。元々は自分で使うために作ったものですが、せっかくなのでオープンソース・フリーソフトウェアとして公開することにしました。

何ができるの?

aoiroで仕訳をすると以下の帳簿と決算書を自動的に作成することができます。

  • 仕訳帳

  • 総勘定元帳

  • 損益計算書

  • 貸借対照表

この4つは青色申告(複式簿記)で作成と保管が義務付けられています。逆を言えば、“この4つだけ作成すれば青色申告特別控除(65万円)が受けられる” ということでもあります。

会計の勉強をすると、現金出納帳、売掛帳、仕入帳など様々な帳簿が登場しますが、これらは補助簿と呼ばれるもので必須ではありません。仕訳帳と総勘定元帳は主要簿と呼ばれています。そもそも、現金出納帳、売掛帳、仕入帳は総勘定元帳のサブセットのようなもので、総勘定元帳には同じ内容が含まれているのです。総勘定元帳の現金勘定のページが現金出納帳と同じ、総勘定元帳の売掛勘定のページが売掛帳と同じといった具合です。

損益計算書と貸借対照表の出力レイアウトに厳密な規格はなく、システムや会社によって決算書のレイアウトは異なっています。 aoiroでは決算書のレイアウトと科目の並びを確定申告書B決算書(損益計算書、貸借対照表)と同じにしてあるので、そのまま確定申告書用紙に転記したり、国税庁ウェブサイトの確定申告書等作成コーナーに入力していくのが容易になっています。

帳簿と決算書の出力例

実際にどのようなPDFファイルが出力されるのかサンプルを見てみましょう。

仕訳帳 と 総勘定元帳

仕訳帳は文字通り仕訳が記帳される帳簿です。あなたが入力した仕訳データだけでなく、家事按分や締切の振替仕訳も自動的に出力されます。総勘定元帳は仕訳を勘定科目ごと分けた帳簿です。仕訳帳の仕訳が総勘定元帳の何ページ目に記載されているか、逆に、総勘定元帳の仕訳が仕訳帳の何ページ目に記載されているか辿れるように相手帳簿のページ番号が出力されます。仕訳帳の「元丁」欄は対応する総勘定元帳のページ、総勘定元帳の「仕丁」欄は対応する仕訳帳のページを表しています。

総勘定元帳は勘定科目ごとに分かれているので特定の勘定科目に着目して推移や残高を確認するのに役立ちます。たとえば「普通預金」勘定のページは銀行の通帳記帳の結果と一致しますし、「売掛金」勘定ページの最下行(残高)を見ればまだ回収できていない売掛残が分かります。

↑ 画像をクリックするとPDFファイルが開きます

損益計算書 と 貸借対照表

損益計算書を英語では Profit and Loss statement と言います。日本でも損益計算書のことを略してP/Lと言ったりしますね。損益の「益」は売上など収益の勘定科目を集計したものです。「損」は消耗品費や水道光熱費など費用の勘定科目を集計したものです。損益計算書を見れば、収入 - 経費 = 所得(控除前) が分かります。

一般的な損益計算書では売上を月別に集計することはないのですが、確定申告書B決算書2ページ目(月別売上)にそのまま転記できるように、aoiroの損益計算書では右側に月別売上も出力するようにしています。

貸借対照表には、期首(1月1日)と期末(12月31日)の資産、負債、資本(純資産)が出力されます。Balance Sheet、略してB/Sと呼ばれたりもします。期末の現金残高、預金残高、売掛残などが分かります。

↑ 画像をクリックするとPDFファイルが開きます

これらの出力されるPDFファイルは、両面印刷してバインダーに閉じやすいよう、奇数ページは左側に綴じ代、偶数ページは右側に綴じ代を配置しています。

ダウンロード

 

上記のリンクをクリックしてaoiroをダウンロードします。ダウンロードしたZIPファイルを好きな場所に展開します。

使ってみよう

aoiroには仕訳を入力するための専用のGUI画面はありません。自分の好きなテキスト・エディターを使って仕訳を入力することができます。

samplesフォルダーに仕訳のサンプルデータが入っているので、自分で仕訳データを入力する前に、まずはこのサンプルデータを使ってaoiroの使い方を覚えましょう。

仕訳データはYAMLというテキスト形式で作成します。拡張子はymlです。YAMLはXMLのように複雑ではなく、人が読み書きし易いように設計されているデータ形式です。仕訳データサンプル1.ymlをテキスト・エディターで開いてみると以下のようになっています。

仕訳データサンプル1.yml
- 日付: 2018-01-01 摘要: 元入金 借方: [ { 勘定科目: 現金, 金額: 20000 } ] 貸方: [ { 勘定科目: 元入金, 金額: 20000 } ] - 日付: 2018-02-21 摘要: ボールペン 借方: [ { 勘定科目: 消耗品費, 金額: 100 } ] 貸方: [ { 勘定科目: 現金, 金額: 100 } ]
おすすめのテキスト・エディター
仕訳データ入力には自分の好きなテキスト・エディターを使うことができます。メモ帳でも大丈夫です。テキスト・エディターにこだわりがないという方はVisual Studio Codeを試してみてはどうでしょうか? YAML形式にも対応しており項目ごとに色が付くので見やすく編集もしやすいおすすめのテキスト・エディターです。

1つの仕訳データは-(ハイフン)で始まります。そして、日付、摘要、借方、貸方の4つの行で構成されます。日付はyyyy-mm-dd形式で記述します。摘要は任意の文字列です。借方と貸方の書き方はちょっと複雑に見えますね。ここでは、なんとなく借方と貸方は[ ]{ }で囲まれている程度の認識で大丈夫です。

上記の例は 20,000円の “元入金” 仕訳と、100円のボールペンを購入したときの “消耗品費” 仕訳です。

まずは、このサンプルデータを処理してみましょう。展開したフォルダーにコマンドプロンプトを開く.batという名前のファイルがあります。このバッチファイルをダブルクリックするとコマンドプロンプトが開きます。このコマンドプロンプトはaoiro.exeが使えるようにあらかじめPATH環境変数が設定されています。

samplesフォルダーに移動して、次のコマンドを入力します。

コマンドプロンプト
C:\aoiro-0.2.4>cd samples C:\aoiro-0.2.4\samples>aoiro.exe -o 仕訳データサンプル1.yml

aoiro.exeの引数に指定している-oは、締め処理をせずに仕訳帳と総勘定元帳のみを出力するオプションです。引数の仕訳データサンプル1.ymlは処理対象の仕訳データファイルです。Enterキーを押してコマンドを実行します。

コマンドプロンプト
C:\aoiro-0.2.4\samples>aoiro.exe -o 仕訳データサンプル1.yml 次のデータファイルを使用して、個人決算処理を実行します。 (1) 勘定科目 | C:\aoiro-0.2.4\default\個人\勘定科目.yml (2) 家事按分 | C:\aoiro-0.2.4\default\個人\家事按分.yml (3) 仕訳   | C:\aoiro-0.2.4\samples\仕訳データサンプル1.yml (2件) 帳簿を作成しています . . . 仕訳帳.pdf を出力しました。 総勘定元帳.pdf を出力しました。 すべての処理が終了しました。 続行するにはEnterキーを押してください . . .

“仕訳帳.pdf を出力しました。”、“総勘定元帳.pdf を出力しました。”というメッセージが表示されていますね。Enterキーを押すとプロンプトに戻ります。

エクスプローラーでsamplesフォルダーを見てみると、仕訳帳.pdf総勘定元帳.pdfが出来ているのが分かります。

仕訳帳.pdfをダブルクリックして開いてみましょう。

仕訳帳には仕訳データサンプル1.ymlの仕訳データが記載されています。まだ仕訳データ件数が少ないので仕訳帳は1ページしかありません。

PDFファイルを開くには?
PDFを開くアプリケーションをインストールしていない場合は
あらかじめAcrobat Readerをインストールしておきましょう。

続いて総勘定元帳.pdfをダブルクリックして開いてみましょう。総勘定元帳は勘定科目ごとにページを分けて出力するため、すでに3ページあります。

決算書も出力してみよう

次は仕訳帳、総勘定元帳だけでなく損益計算書と貸借対照表も出力してみましょう。今度は引数-oを付けずに仕訳データサンプル1.ymlのみを指定してaoiro.exeを実行します。

メモ
Acrobat Readerで仕訳帳や総勘定元帳のPDFファイルを開いている場合は、aoiro.exeを実行する前にPDFファイルを閉じておいてください。PDFを開いている状態でaoiro.exeを実行すると「別のプロセスが使用中です。」というエラーが表示されてPDFが出力されずに終わります。
コマンドプロンプト
C:\aoiro-0.2.4\samples>aoiro.exe 仕訳データサンプル1.yml 次のデータファイルを使用して、個人決算処理を実行します。 (1) 勘定科目 | C:\aoiro-0.2.4\default\個人\勘定科目.yml (2) 家事按分 | C:\aoiro-0.2.4\default\個人\家事按分.yml (3) 仕訳   | C:\aoiro-0.2.4\samples\仕訳データサンプル1.yml (2件) 決算処理を実行しています . . . 収益の損益振替が完了しました。 費用の損益振替が完了しました。 損益の資本振替が完了しました。 資産の残高振替が完了しました。 負債の残高振替が完了しました。 資本の残高振替が完了しました。 帳簿を作成しています . . . 仕訳帳.pdf を出力しました。 総勘定元帳.pdf を出力しました。 損益計算書.pdf を出力しました。 貸借対照表.pdf を出力しました。 繰越処理を実行しています . . . 次年度の開始仕訳.yml を出力しました。 すべての処理が終了しました。 続行するにはEnterキーを押してください . . .
ドラッグ&ドロップでもOK
コマンドプロンプトを開かずに、仕訳データファイル(.yml)を
aoiro.exeにドラッグ&ドロップするだけでも実行できます。

今度は決算処理も実行されているので出力メッセージが長いですね。損益計算書と貸借対照表も出力されているか、samplesフォルダーを確認してみます。

ちゃんと出力されたようです。

  • 仕訳帳.pdf
  • 総勘定元帳.pdf
  • 損益計算書.pdf
  • 貸借対照表.pdf
  • 次年度の開始仕訳.yml

という5つのファイルが出力されています。

損益計算書.pdfをダブルクリックして開いてみましょう。ボールペンを購入した仕訳しか入力していないので寂しい損益計算書ですが、経費として100円が計上されていて、最下部の「青色申告特別控除前の所得金額」が -100円になっています。

メモ
会計ではマイナスを△で表すことが多いです。

次は貸借対照表.pdfを開いてみます。こちらも仕訳を2件しか入力していないのでほとんど空っぽです。資産の部「現金」を見てみると期首20,000円が期末19,900円に減っています。100円のボールペンを購入したからですね。

決算処理をすると仕訳帳と総勘定元帳にも変化があります。もう一度、仕訳帳と総勘定元帳を開いてみます。

仕訳データは2件しかないのに仕訳帳には7件の仕訳が表示されています。 期末(12月31日)の日付で自動的に追加されているこれらの仕訳を決算振替の仕訳と言います。決算振替の仕訳は自動的に追加されるので仕訳を入力するときに気にする必要はありません。あなたは実際の取引の仕訳を入力するだけです。aoiroが全自動で決算処理をしてくれるので振替仕訳の方法が分からなくても大丈夫です。

決算処理は何度でも実行できます
決算処理を実行しても入力した仕訳データファイル(YAML)にデータが書き加えられることはありません。決算仕訳はメモリー上で処理されてPDFにのみ出力されます。そのため、間違いがあれば仕訳データを修正して再び決算処理をする、といったこと気軽に何度でも繰り返すことができます。

決算処理は総勘定元帳.pdfにも影響を及ぼしています。

決算振替の仕訳が追加されたのにともない、「損益」「控除前の所得金額」「残高」という3つの振替勘定科目のページが追加されています。各勘定科目ページの末尾には「残高」もしくは「損益」の行が追加され、借方と貸方の金額が一致、二重線が引かれています。これを帳簿の締切と言います。帳簿の締切も自動的におこなわれるため、仕訳帳と総勘定元帳の記帳方法を知らなくても正しい帳簿を作成することができます。

どうでしたか?

aoiroを使えば…
日々の取引を仕訳データとして入力していけば、
青色申告(65万円控除)に必要な帳簿と決算書をすべて自動的に作成できる

というaoiroの特徴が少しは伝わったでしょうか。


ここまではサンプルの仕訳データを使ってどのような出力が得られるのかを説明してきました。次のページからは、あなたの実際の取引を仕訳データとしてどうやって入力していけばいいのかを説明していきます。

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